祖父江慎さんのブックデザインより
18日は午後から東京出張。
ばったり駅前でFH社のS氏に久方ぶりに出くわした。聞くとロスまで視察出張ですと!カッコええ。(笑)
米国大手流通小売のウォルマート視察との事。戻られたら話を伺おう。
さて、当社とお付き合いのあるINAX出版さんが本日から20日までアノニマスタジオで開催されているBOOK MARKET
2011に出展なされるとの案内をいただいていた事もあり立ち寄った。アノニマスタジオは、こじゃれたワークショップなどを開催されていて一度、立ち寄ってみたい所だったのと、INAX出版さんのお手伝いさせていただいている書籍の電子書籍化の話もしたかったのでお邪魔させていただいた。
最近のブックレットは祖父江慎さんの手によるものが多く、祖父江さんらしい愛着のある本づくり、遊びごころたっぷりのデザインで相変わらずの祖父江節だな~と感心。
祖父江さんのブックデザインワールドはリアルな本を手にとって見てもらわないとその魅力は伝わらないですね~と編集の方とお話した。
バイリンガルになっている現代建築家コンセプトブックなら電子書籍化する意味あいはあると思うが、INAXブックレットの方は紙に刷られた本でなければ出来ないデザインと表現の工夫がなされている。
「INAXブックレット」祖父江慎さんのブックデザイン
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にっぽんの客船 タイムトリップ 外国への渡航を船が一手に担っていた時代。 日本の客船づくりは海外の模倣から始まり、大正後半から昭和初期には国の威信をかけたものとなり、造船技術の習得と開発が進んで、日本独自の設計やデザインによるものへと大きく発展を遂げていきました。本書では、日本のデザインの完成形をみることができる客船として、大阪商船(現・商船三井)の「あるぜんちな丸」と、東京湾汽船(現・東海汽船)の「橘丸」を中心に、当時、限られた人々のみが搭乗を許された優雅な空間や趣向を凝らしたおもてなしなどを紹介します。船の旅の全盛期にタイムトリップできる一冊です。
幕末の探検家 松浦武四郎と一畳敷
幕末に生きた多彩な顔を持つ稀代な才人、松浦武四郎。
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僕はエディトリアルデザインから自身のキャリアをスタートさせたので本という存在は大好きだ。だから祖父江さんのような仕事は愉快だし、見ていて楽しい!
他方、祖父江さんのデザインを受け止めて具現化する印刷の現場、製版の現場は大変だよなあ、と思う。
今、自身はその受け止める側の印刷会社に所属していて、そこでの生産性重視の工場論理の中にイレギュラーファクター満載の祖父江さんのような仕事は現場へデザイン意図を伝え、仕上がりを見つめ、といった進行を担うものの負荷と仕事量を増大させるから大変だ、と言っている自分にも気付かされる。
つまりは、デザイナーとプリンティングディレクターとの会話、プリンティングディレクターと現場との会話によって支えられる品質があり、祖父江さんの仕事は、それを最大化するデザインであって、それを知る自分が、だから愉快さを感じているのだと思う。
だけど、そういうデザインはコミュニケーションが不足するとたちどころに、スムースに物事が運ばなくなる、つまりはコミュニケーションを怠った横着な自分が照らされるので苦さを感じているのかもしれない。
印刷の価格の低下が、一層、コミュニケーションを排除して自動的に流れるような生産効率重視になり、という事で祖父江さんのような仕事を受け止められる会社、ディレクターは少なくなっているのだろうなあ、と思わされる。
そのような事で、密度の高いデザインとそれを支えられる印刷現場との幸福なコラボレーションの中で初めて可能になるブックデザインは希少性があるが故に今後も残りうる紙の本の世界だが、印刷現場が、存続しうるのか?
一方、電子書籍は対極の経済合理性や本の置き場所の問題から自由になる利便性の中でレコードという器が、CDという器に変遷したように、紙の本から電子書籍へと変遷するのも時間の問題であるかも知れず無視出来ない。
だが、紙の本が持っていた存在感と、マテリアル、テクスチャ、重さ、匂いといった五感に訴える書物の物質としての魅力の多くを削ぎ落とす。
電子書籍と紙の書籍を二項対立的に捉えるのでなく、ハイブリッドで当面、良しと個人的には考えるので、それぞれの長所、短所を補完しあえれば良いと思う。
紙の本という商品の”ものづくり”、プロダクトとしてのデザイン、存在感、気配といったものを軸に考えるのと、出来た本の流通と販売というマーケティング&セールス軸を中心に考えるので、好き、嫌い、良し、悪しの評価は変わるだろう。
ひとつ言えるのは、祖父江さんのような本に愛着のある”ものづくり”は受け手にも伝わるし、またその魅力ある世界は、その手元に広がっている。
そして、そういうブックデザインは生き続けると思うのだが、それを支える印刷・製本の現場が環境の変化の中で生業を維持し続けることができるのか、どうか?そこが問題だ
デザインも印刷も二つの現場を持つ私の会社で、本当ならそのような”ものづくり”が継続できるような技術の継承、現場の維持、人材の確保、社業の存続がなしえれば良いのだが…。
これは”在り方”の問題で、”意志”の問題でもある、そうしていく。という人たちが電子書籍と紙の書籍の両方の長所を活かし、存続していける経営をやっていければ理想的だなあ。と思う。
祖父江さんの仕事から考え始まった「本をめぐる雑記」はこれまで。
会場でフランス装の文庫スタイルの本がふと目に留まって手にとった。近年、人気の高い建築ユニットのアトリエワン・貝島桃代さんの『建築からみた まち いえ たてもの のシナリオ』だった。
中のイラストもご本人の手によるものだったが素敵なイラストだった。中身も興味があるので今度、読もう。
『建築からみた まち いえ たてもの のシナリオ』
貝島桃代 著 定価 1,470円(税込) 320頁 天地170mm×左右110mm 並製 ISBN 978-4-87275-161-1 2010年4月20日
独特の視点で都市を読み解き、まちを縦横無尽に駆け抜ける貝島桃代初の単著。1999年から『10+1』に連載された「トーキョー・建築・ライナーノーツ」他、さまざまな媒体で書きためたテキストに加え、今回新に書き下ろした11本を含む34本の論考を収録。「まち」「いえ」「たてもの」というキーワードを手がかりに、「建築からみる」ことの可能性を浮かび上がらせる。アトリエ・ワンとしても活躍する彼女の、建築家としての勘と鋭い眼差しが光る一冊。
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